最後に、名入れタオルの種類と目方についてのお話をしておきましょう。
まずタオルの種類ですが、純白とソフトと呼ばれるものがあります。
純白は別名シリンダーとも呼ばれ、アイロンをかけたみたいにペッタンコになっている製品です。
一枚の厚みを薄く出来るので、かさばらないのが特徴です。
ソ フトは、熱風で生地の表面を立たせてボリューム感を出した物です。
見た目にも厚みがありますし、ふんわりしていますが、
その分シリンダーに比べ1割程度割 高となってしまいます。
次に目方のお話をしましょう。
タオルにとって、目方というのは重要なものになります。
というのも、取引の基本が目方で行われているからなんです。
そしてその目方も、一般的なグラムではなく、匁(もんめ)という単位を使います。
1匁は、3.75gで、200匁で700gです。この200匁が1ダース相当として取り扱われます。
こういった大まかな単位で物事が進んでいるのと機械の特徴から一枚辺りの重さの変動はどうしても避けられません。ですから、同じロットでも、何枚か見比べ てみると、若干違いが発生しています。そのため、1枚1枚の重さで比較するのではなく、1梱包(600枚)あたりの目方を量って計測することになります。 言い訳になるようですが、トータルの匁で換算しているので、1枚辺りの誤差は大目にみていただくしかないのが現状です。
ちなみに、実際に作る場合は、120匁から20匁単位で、300匁までとなります。実際には260匁までが限界で、それ以上になると袋を変える必要があるので、あまりやっていないのが実情です。
最後に、またまた余談ですが、中国製品はこの一枚あたりのバラツキが特に大きいようです。重さだけでなく、長さも3センチから5センチも違うこともありま す。(本当です!)逆にベトナム製はほとんどそういうことがありません。仕事だけの印象からすると、ベトナムの人は、すごくまじめで、言われたことを忠実 に守っているように感じられますね。もしかしたら、何年か後には、タオルの主力生産拠点は、日本でも中国でもなく、ベトナムということもありえるかもしれ ません。
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日本製と中国製の名入れタオル
実は名入れタオルの産地は、泉州だけではありません。
海外からの輸入物も多く出回っています。
まあ、コスト面を考えると、どうしても海外の方が安くはなりますから、仕方のないことではありますね。
海外製品のほとんどは中国産です。
中国製の問題点は、とにかく品質面でのトラブルが多いです。特に問題と言えるのが、糸の本数の少な さです。糸の数が少ないとなぜいけないかというと、タオル生地自体の密度が甘いため、どうしても糸がほつれやすくなります。その分、コストが安いから当然 と言えば当然なのですが、それだけでは収まらない問題が存在しているんですね。
まずは見かけの問題ですが、中国製品は日本製にくらべて密度が甘いと言いました。でも、この密度の甘さが幸い(?)してか、見た目では中国製品の方がふんわりしているように感じるのです。つまり、並べて見ると、中国製品の方が立派に見える場合ものあります。
それからそれ以上に問題なのが、タオルについているラベルです。
通産省の通達で、タオルには産地の入ったタグルをつけることになっています。中国で作っているのなら中国製、日本で作っているのなら日本製という具合に。 ところが、この法律にも抜け穴があるのです。中国で作った製品であっても、SP品(セールスプロモーション。販売促進)扱いであいれば、タグを付けなくて もかまわないとなっています。そこで、途中まで中国で製造し、SP品で輸入しておいてから、日本で2工程の加工をすれば、なんとその製品は日本製となるん ですね!
ですから、肝心要の製造は中国なのに、最終的には堂々と「日本製」となって市場に出回ることになるのです。
そしてもうひとつのカラクリとして、中国で製造する際に、「日本タオル協会」とか「日本タオル工業組合」といった表示のタグをつけて輸入してくるケースも あります。お客さんの中には、このタグだけを見て「日本製」と思う人もみえるようです。日本製なら間違いなく「日本製」のタグをつける工場がほとんどで す。ちょっと嫌味な言い方をしますと、「日本タオル協会」が認める中国製という意味です。
元々中国製品であるとわかっていて買っているのなら、品質の悪さもある程度納得できるのですが、これらのケースの場合お客様は「日本製」と思って買っていますので、当然品質面で問題が出た場合は、ユーザークレームにつながります。
仕事や利益を確保するためにやむを得ないという気持ちもわからなくもないです。
でも、こういうことをした結果、最後に迷惑を被るのはお客様です。そして他でもない私たちタオル業界全体です。いくら仕事を取るためだからとはいえ、こう いったやり方をして、お客様にご迷惑をかけるのは、どうしても許せません。ましてや、日本の優秀な職人たちが心を込めて作ったタオルが、これらの商品と比 較された結果、選択肢から外されるのはやり切れないものがあります。しかも、こういったことはタオル業界全体に対しても「タオルっていい加減なもの」「さ すがタダで配るものはこの程度だなあ」という意識を消費者に根付かせてしまい、結局「もうタオルなんて配るのをやめよう」という結果につながってしまいま す。一部の業者のやり方で、多くの人が迷惑を被るのは、いかがなものでしょうか?
ちなみに余談ですが、最近中国製にかわって、ベトナム製品の需要が増えつつあります。
ベトナム製品は、中国製品にくらべて品質も良く、仕事もキチンとしています。今、多くの日本企業が中国からベトナムにシフトしていると聞きましたが、なるほどその通りだなあと実感しております。いずれタオル業界も、海外製品はベトナムが中心となるような予感がしますね。
名入れタオル完成後の袋詰めとロット
名入れタオルをお店などから手渡されたこのとある方はお気づきと思いますが、普通名いれタオルは「のし」をかけられた形でビニールの袋に入っていますよね?
あの「のし」に「粗品」とか「おたおる」といった文字を印刷してタオルにかけ、そしてビニールに袋詰めするのも、私たちの仕事の一部です。
まず、「のし」についてなのですが、こちらももう基本形が決まっています。
よく見かける、紅白の結びに「粗品」とか「おたおる」といった文字を上側に印刷し、下側には社名や店名を印刷します。時折、住所や電話番号を入れられるお客様もいらっしゃいますね。
この「のし」なんですが、たとえば良くある水引きの柄ではなく、もっとオシャレな感じに出来ないかとか、ブルーやピンクなどの色を使えないかというお問い合わせも頂戴することがごく稀にあります。
結論から言うと、これは可能です。
でも、ニーズが極端に少ないため、機械の設定やのし紙の確保などが大変になってしまうので、作り手からするとあまりやり たくない作業になってしまいます。
とはいえ、お客様のご要望が最重要ですので、ご依頼があれば当然させていただきます。
ただし、その場合はどうしてもコス ト高になってしまうことを最初にご説明させていただいております。
この辺も、もっとデザインに凝れば見栄えも変わってくると思うので、今後の課題のひとつ ではありますね。
さて次は、袋のお話をさせていただきましょう。
のしをかけられたタオルは、次にビニールの袋に詰められて、セロテープで封をされます。これで出荷前の状態が完成します。このビニール袋ですが、基本的な 材質はPP材を使っています。また最近では、PP材よりも透明度が高いOPP材を使うケースも出てきています。
OPP材は確かに見栄えはいいのですが、そ の分値段も高く、PP材の3~4倍のコストがかかってしまうのが難点ですね。
それから最近では、袋の表面に名刺を入れられるポケットのついたものもあります。
これなんかは、非常に良いアイデアだと思いますので、みなさんが名入れタオルを作られる際にぜひ検討してみてはいかがでしょうか?
袋詰めが終わり、いよいよ出荷となるわけですが、タオルにもやはり出荷ロットというものが存在します。この出荷ロットを知っておくと、結果割安に名入れタオルを発注することが出来るの で、ぜひ押さえておいてください。タオルの場合、ロットの基本はダースとなります。
つまり、12本単位ですね。
その上、プリントをする場合の基本最低ロッ トは10ダースです。
ということは、最低ラインで120本の発注となるわけです。
もちろん、10本単位でもお受け出来ますが、基本外となってしまうため、 どうしても割高にはなってしまいます。ダースによる考え方はタオルに共通していることなので、この辺を理解していただいていると、ムダのない発注が可能に なるとは思いますよ。
※印刷時、あるいは商品包装時に生地や印刷の具合によりB品(規格落ち品)が出る場合があります。このとき稀に、120本のロットが118本になったりすることもあるということをご理解頂ければ幸いです。
名入れタオルのプリントの基本と印刷色の紺色について
プリントの基本
ここでは、名入れタオルがどのようにして作られていくのか、そして、それがコスト面でどう影響を及ぼしているのかについてお話していくことにします。まず、「プリントの基本」ということで、名入れタオルにおけるプリントは、どういうやり方が基本となっているのかということなんですが、前章でも述べました通り、タオル生地の両端にある平地と呼ばれる部分にプリントを施します。
平地とは、パイル(糸が輪っか状になっているもの)がなく、平らになっている部分ですが、この片側にのみプリントをするのが通常のやり方です。
この平地なんですけど、おおよそ10センチ×32センチの面積となります。実際にプリントするためには、上下左右に若干の余白を取りますので、もう少し狭くはなりますが、この範囲内で印刷するということになります。
印刷方法としては、シルクプリントとオフセットプリントの2種類があります。シルクプリントは、日本 の友禅染・型染の型紙からヒントを得たイギリス人技師が、絹を使った印刷版を作ったのが始まりと言われています。印刷版ごしに塗料を拭きつけ、対象物に定 着させてプリントするというやり方ですね。
この方法の最大の特徴は、相手が平面でなくても印刷できるということです。紙や鉄の板ならともかく、タオルは厳密にいうと平面ではありません。そのため、シルクプリントには向いている物の一つといえるでしょう。
あと、多色刷りにも強いのが、シルクプリントです。デメリットとしては、印刷版を作るのにコストがかかるということと、印刷版がズレてしまうと印字品質が落ちるため、なかなかオートメーション化しづらいという面があります。
オフセットプリントは、分かりやすくいってしまえば、印刷版にインクを付けて対象物に押し付けて定着させる方法です。
一般的な方法としては、PS版と呼ばれるものを使う方法があります。このPS版は、板面に水に馴染む部分と水をはじく部分を作り、そこにインクをつけるこ とで水に馴染む部分だけにインクが残るような仕組みになっているのです。これにより、細かい文字やデザインでも、キレイにプリントを行うことが出来ます。 メリットとしては、機械化しやすいので大量生産にむいていることと、シルクプリントに比べてコストが安い点ですが、一方デメリットとして、水分を多量に使 うため、機械が汚れやすいという点があげられます。
オフセットプリントのもう一つの技法に、樹脂版を使うものがあります。これは、プラスチック樹脂の印刷版に紫外線を当てることで、凹凸を作り、そこにイン クを載せてスタンプのようにペタペタ押して印刷する方法です。樹脂版のメリットは、水を使わないため、汚れないことと、熟練していない素人でも作業が可能 なことです。デメリットはPS版に比べて細かな描写がやりにくいということです。
このようにコスト面を考えると、シルクプリントよりもオフセットプリントの方が安くすむのと、名いれタオルは基本的に単色プリントなので、名入れタオルではオフセットプリントを使うことがほとんどです。
また、神野織物では作業効率や汚れにくいという面から、樹脂版によるオフセットプリントが中心となっています。(※お客様からのデータが細かい場合は、 PS版を使った印刷工場で作成します。こちらもPS版に比べ、細かい描写に不向きなのですが、名入れタオルの場合、それほど細かい描写が必要となるケース が無いので、こちらを採用しています。確かに細かい描写が出来るにこしたことは無いのかも知れませんが、それよりも生地を汚しにくいというメリットの方が 多いですので。
あ、そうそう。ひとつ言い忘れていました。
もし色落ちを気にするのでしたら、スクリーンプリントをおすすめします。なぜかというと、スクリーンプリントのインクは、ペンキのように強いため色落ちが ほとんどしないようになっています。その分、価格は高くなりますが、「色落ちするよりは・・・」とお思いでしたら、迷わずスクリーンプリントをお選び下さ い。もちろん、PS版,樹脂版を使用するオフセットプリントでもすぐに色落ちするなんていうことはありません。ただ、スクリーンプリントと比較する と・・・というお話になります。
印字色の基本は紺色
名入れタオルの場合、プリントに使う色は単色が基本です。名前と住所、電話番号ぐらいですから、逆に多色にしてしまうと、見づらいかも知れませんし。
ところで、このプリントに使われる色なんですが、基本色として紺色が使われます。
ちょっと思い起こして見て下さいね。あなたが今までご覧になられた名入れタオルって、白地に紺色の文字がほとんどじゃなかったでしょうか?
「なぜ、紺色なの?」と聞かれると、返事に困る部分もあるのですが、長年の慣習でそうなっているとでもしておきましょう。もしかすると、元々染物文化あた りから来てるのかも知れません(あくまでも私の推測ですが・・・)まあ、確かに白地に紺色は非常に見やすいですしね。一番無難な組み合わせとも言えるで しょう。
では逆に、他の色は出来ないの?ということなんですが、結論から言うと出来ます。
それこそ、赤でもピンクでもOKです。ただし、紺色を基本としているため、紺色以外の色はオプション扱いとなり、その分割高になってしまいます。
「インクの色を変えるだけで、割高になるなんて!!」
確かにそうですね。何となく納得しづらい部分もありますよね。でも、これにはちゃんとした理由があるんです。
再三申し上げている通り、名入れタオルの印刷色は紺色が基本です。
ということは、プリントの機械はほとんど紺色のインクしか使われていないということになりますよね。ですから、別の色のインクを使う場合は、一度機械をキ レイにメンテナンスする必要があります。前にも書きましたが、オフセットプリントの場合、水を多量に使うので、少しでも機械に紺色のインクが残っている と、混じってしまう危険性が高いのです。このメンテナンスの手間を考えると、どうしてもその分コストに反映せざると得ない結果になってしまうのです。
この部分は、今後のことを考えると何とかしたいとも思うのですが、現状ではどうしようもないことなので、今のところはご理解いただきたいと思います。
中国産やベトナム産など名入れタオルに使用するタオル生地
プリントタオルの場合、プリントにかかるコストはさほど変化しません。
そのため、コスト的に大きく影響するのはやはり生地ということになります。
泉州の生地を使う理由は、今治の生地よりも安いということがあります。
では、なぜ泉州の生地の方が安いのでしょうか?
これも前作でご説明していますが、タオルの生地というのは、横糸と縦糸を織り込んで作って行きます。この糸の本数が、泉州は今治に比べて少ないのです。具 体的にいうと、泉州は1インチあたり縦糸32本、横糸35本が基本、今治は1インチあたり縦糸45本以上、横糸45本以上が基本です。
単純にみても、縦横それぞれ10本程度糸の本数が違いますよね。これだけでも、原価には大きく影響してきます。
それに加えて、双方の加工工程の違いによる部分も大きいです。
詳しいことは、企業秘密になるので言えませんが、今治の方が泉州よりも工程が少し多いと思ってください。元々原材料の糸の本数が多い上に、加工工程が多いわけですから、必然的に今治は泉州よりもコスト高になってしまっているのです。
確かに今治のタオルは生地の密度も高いので、オリジナルプリントタオルには最適ですが、名入れタオルということになると、泉州でも充分に品質の高い製品を作れます。
そのため、コストをかけられない名入れタオルには、泉州の方が向いているというわけなんですね。
弊社でも名入れタオルは基本的に泉州ものにしています。
時折、コストの兼ね合いで中国やべトナム産のタオルを使ったりしますが、やはり国内産の方が、出来ばえも安心感も高いと言えますね。