プリントの基本
ここでは、名入れタオルがどのようにして作られていくのか、そして、それがコスト面でどう影響を及ぼしているのかについてお話していくことにします。まず、「プリントの基本」ということで、名入れタオルにおけるプリントは、どういうやり方が基本となっているのかということなんですが、前章でも述べました通り、タオル生地の両端にある平地と呼ばれる部分にプリントを施します。
平地とは、パイル(糸が輪っか状になっているもの)がなく、平らになっている部分ですが、この片側にのみプリントをするのが通常のやり方です。
この平地なんですけど、おおよそ10センチ×32センチの面積となります。実際にプリントするためには、上下左右に若干の余白を取りますので、もう少し狭くはなりますが、この範囲内で印刷するということになります。
印刷方法としては、シルクプリントとオフセットプリントの2種類があります。シルクプリントは、日本 の友禅染・型染の型紙からヒントを得たイギリス人技師が、絹を使った印刷版を作ったのが始まりと言われています。印刷版ごしに塗料を拭きつけ、対象物に定 着させてプリントするというやり方ですね。
この方法の最大の特徴は、相手が平面でなくても印刷できるということです。紙や鉄の板ならともかく、タオルは厳密にいうと平面ではありません。そのため、シルクプリントには向いている物の一つといえるでしょう。
あと、多色刷りにも強いのが、シルクプリントです。デメリットとしては、印刷版を作るのにコストがかかるということと、印刷版がズレてしまうと印字品質が落ちるため、なかなかオートメーション化しづらいという面があります。
オフセットプリントは、分かりやすくいってしまえば、印刷版にインクを付けて対象物に押し付けて定着させる方法です。
一般的な方法としては、PS版と呼ばれるものを使う方法があります。このPS版は、板面に水に馴染む部分と水をはじく部分を作り、そこにインクをつけるこ とで水に馴染む部分だけにインクが残るような仕組みになっているのです。これにより、細かい文字やデザインでも、キレイにプリントを行うことが出来ます。 メリットとしては、機械化しやすいので大量生産にむいていることと、シルクプリントに比べてコストが安い点ですが、一方デメリットとして、水分を多量に使 うため、機械が汚れやすいという点があげられます。
オフセットプリントのもう一つの技法に、樹脂版を使うものがあります。これは、プラスチック樹脂の印刷版に紫外線を当てることで、凹凸を作り、そこにイン クを載せてスタンプのようにペタペタ押して印刷する方法です。樹脂版のメリットは、水を使わないため、汚れないことと、熟練していない素人でも作業が可能 なことです。デメリットはPS版に比べて細かな描写がやりにくいということです。
このようにコスト面を考えると、シルクプリントよりもオフセットプリントの方が安くすむのと、名いれタオルは基本的に単色プリントなので、名入れタオルではオフセットプリントを使うことがほとんどです。
また、神野織物では作業効率や汚れにくいという面から、樹脂版によるオフセットプリントが中心となっています。(※お客様からのデータが細かい場合は、 PS版を使った印刷工場で作成します。こちらもPS版に比べ、細かい描写に不向きなのですが、名入れタオルの場合、それほど細かい描写が必要となるケース が無いので、こちらを採用しています。確かに細かい描写が出来るにこしたことは無いのかも知れませんが、それよりも生地を汚しにくいというメリットの方が 多いですので。
あ、そうそう。ひとつ言い忘れていました。
もし色落ちを気にするのでしたら、スクリーンプリントをおすすめします。なぜかというと、スクリーンプリントのインクは、ペンキのように強いため色落ちが ほとんどしないようになっています。その分、価格は高くなりますが、「色落ちするよりは・・・」とお思いでしたら、迷わずスクリーンプリントをお選び下さ い。もちろん、PS版,樹脂版を使用するオフセットプリントでもすぐに色落ちするなんていうことはありません。ただ、スクリーンプリントと比較する と・・・というお話になります。
印字色の基本は紺色
名入れタオルの場合、プリントに使う色は単色が基本です。名前と住所、電話番号ぐらいですから、逆に多色にしてしまうと、見づらいかも知れませんし。
ところで、このプリントに使われる色なんですが、基本色として紺色が使われます。
ちょっと思い起こして見て下さいね。あなたが今までご覧になられた名入れタオルって、白地に紺色の文字がほとんどじゃなかったでしょうか?
「なぜ、紺色なの?」と聞かれると、返事に困る部分もあるのですが、長年の慣習でそうなっているとでもしておきましょう。もしかすると、元々染物文化あた りから来てるのかも知れません(あくまでも私の推測ですが・・・)まあ、確かに白地に紺色は非常に見やすいですしね。一番無難な組み合わせとも言えるで しょう。
では逆に、他の色は出来ないの?ということなんですが、結論から言うと出来ます。
それこそ、赤でもピンクでもOKです。ただし、紺色を基本としているため、紺色以外の色はオプション扱いとなり、その分割高になってしまいます。
「インクの色を変えるだけで、割高になるなんて!!」
確かにそうですね。何となく納得しづらい部分もありますよね。でも、これにはちゃんとした理由があるんです。
再三申し上げている通り、名入れタオルの印刷色は紺色が基本です。
ということは、プリントの機械はほとんど紺色のインクしか使われていないということになりますよね。ですから、別の色のインクを使う場合は、一度機械をキ レイにメンテナンスする必要があります。前にも書きましたが、オフセットプリントの場合、水を多量に使うので、少しでも機械に紺色のインクが残っている と、混じってしまう危険性が高いのです。このメンテナンスの手間を考えると、どうしてもその分コストに反映せざると得ない結果になってしまうのです。
この部分は、今後のことを考えると何とかしたいとも思うのですが、現状ではどうしようもないことなので、今のところはご理解いただきたいと思います。