本染め手ぬぐい(注染手ぬぐい)の製造方法

「手ぬぐい」という物がどういう物かを知っていても、実は持っていない。
おそらく現代においては、そういう人がほとんどではないでしょうか?
それこそ、昭和の始めごろには当たり前のようにあった日用品なのに、今では絶滅危惧種のごとく、ほとんど目に触れることが無くなりました。

本染め(注染)手ぬぐいは、私たち日本人のほとんどが頭に思い浮かべる、あの白地に藍色で文字や模様が染められている手ぬぐいです。時代劇なんかでおなじみですよね。
あの本染め手ぬぐいは、今でも立派に現役として、世の中に出回っています。

本染め手ぬぐいの製造方法なんですが、「注染」という方法で作られます。
どんな方法かというと、まず型通しということをやるのですが、これは生地の上に、文字や模様をくりぬいた型というものを当て、その上から糊を塗っていきます。
こうすることによって、糊のついた部分のつかない部分が出来ます。
この布を染めると、糊のついた部分だけ染め上がらないため、それが白抜きとなって、文字や模様が残るという仕組みです。

糊付けされた生地は、積み重ねられて一つのかたまりになります。
だいたい一度に10枚~20枚を重ねておきます。
重ねられた生地は、流し台のようなところに入れられ、その上からインクを流しておきます。
生地がインクに浸ったところで、足元のペダルを踏むと、流し台の底から一気に空気が吸い込まれ、その際インクも同時に吸い込まれます。
その力を利用して、生地を一気に染め上げていきます。
この手法を「注染」といい、本染め手ぬぐいを作るときの最もポピュラーな方法となります。

なお、本染めには手ぬぐいの中央部分に柄が描かれた「一般染め」、生地の半分に模様を染め抜いた「通し柄」、手ぬぐいの上半分もしくは右半分に色が入る 「半ベタ染め」、お祭り用などによく使われる小さな柄を染め抜いた「総豆柄」、手ぬぐい前面に色を染め、柄が白抜きとなる「全ベタ染め」があります。

ちなみに、使える色の数ですが、一般染めと半ベタ染めが2色から3色、総豆柄が単色から2色、通し柄と全ベタ染めが単色となります。

 

注染で染めるオリジナル手ぬぐいの特色・染め方と手入れ方法

注染の特色

1つ目の特徴は生地の裏面まで染まるという部分です。
注染は一度の型置で両面に防染ができる上に、下からの吸引により染料がよく浸透し、繊維の奥までしっかりと染まり、裏面まで柄が出ます。

2つ目に、注染の型紙は少し大きいので自由にデザインしやすいという部分です。
また、型紙は枠を付けて型置をするので扱いやすくなっています。

その他の特徴としては「差し分け」という染め方があります。
染色は、一つの型で一色だけ染めるものが多いのですが、注染の場合は、「差し分け」という染め方で、一つの型で多くの色を同時に染めることができます。
そのためにはそれぞれの色が混ざらないようにする必要があり、色の境界に糊(のり)を置いて土手をつくり染料を注ぎます。これは、土手で囲った内側が外側の色で染まらないようにするためです。

他にも「ぼかし染」という染め方があり、この「ぼかし染」は色の濃淡やぼかしをつけるため「差し分け」と違い、色の境目に糊は置かないで染めます。

本染め手ぬぐいの染め方

本染めの手ぬぐいは、晒(白生地)を後から染めるのが一般的です。

染め方にはいくつかの種類があり、昔から用いられているのが「捺染(なっせん)」で、色々な文様の型紙を使って、片面のみ染めます。

豆絞り手ぬぐいは「絞り染め」という技法を使っていましたが、手間がかかるため現在はあまり用いられていません。

主流は「注染(ちゅうせん)」と呼ばれる染め方で、糊を置いた部分だけが染め残り柄が表現されます。両面が染まり裏表なく使えるのが特長です。

詳細は、注染のオリジナル手ぬぐいのページをご覧ください。

本染め手ぬぐいの手入れ

注染(本染め)の手ぬぐいを洗濯する際はお湯や洗剤を使うと色落ちしやすいので水で押し洗いします。ねじって絞ると生地が傷むため、軽く押して水気を落とし、ハンガーや竿にかけて陰干しするだけですぐに乾きます。アイロンをかける場合はスチームで手ぬぐい生地を湿らせてからかけると傷みにくいです。

手ぬぐいをオリジナルで製作した後の用途

汗を拭く、すすいだ後の食器を拭くなど、乾きやすく常に清潔に使え、手触りもよい手ぬぐは、かさばらないのでハンカチ・タオル代わりに最適です。

少し前までは個人商店などで、年始や祝いの際に、あつらえた手ぬぐいを挨拶代わりに贈るのは一般的でした。

今でも、実用的な上に記念になるので、引っ越しの挨拶や引出物に名入れをした手ぬぐいは人気があります。

カフェやバーで店員さんが頭に巻いているのもバンダナではなく手ぬぐいが増えています。

日常生活でも食器にかぶせたり、棚の上に敷いたり、ちりやほこりよけにも使われていました。

弁当箱を包んだり、車のヘッドレストに巻いたり、パソコンのディスプレイのほこりよけに使ったりするのも良いですね。

オリジナル手ぬぐい

オリジナル手ぬぐい

オリジナル手ぬぐい



どんどんその姿を消している手ぬぐいです。
何とか、我々の手で後世に伝えていかなければならないと感じております。
そこで、「手ぬぐいの未来」について考えて行きたいと思います。

まず私が最初に思いついたのが、「高品質路線」です。
特に本染めの手ぬぐいの話になるのですが、関東の手ぬぐいで作られている物の中で、高級路線の物があると言いました。それをもっと推し進めて行ってはどうか?と思っています。
洋服にオーダーメイド、セミオーダー、既製服があるように、完全なオーダーメイドで、世界にたった1枚しかない本染め手ぬぐいを作るというのも、ありだと思うのです。
世界にたった一つしかなくて、しかもその手ぬぐいの美的価値が高ければ、それなりのステータスになりますし、当然値段だって高くなるでしょう。
そうすれば、職人のやりがいも大きく違ってくるんじゃないでしょうか?

本 当に腕の良い職人が、やりがいを持って手ぬぐいを作る、そうすることにより、より価値のある商品が生まれる。この連鎖が、手ぬぐい文化をより良いものにし ていくのではないかと思っています。もちろん、こうなるには、作り手の意識も変える必要があるでしょう。今までもお話しましたが、関東ではこういった考え を持った職人が多数います。でも、大阪はまだまだそういった域には達していません。それは今までがそういう考え方をしてこなかったからだけで、これから変 えていけば良いだけの話です。私どもも、大阪の手ぬぐい文化が変わっていけるよう、支援していきたいと思っています。

もう一つ、手ぬぐいの未来を担っていると思われるのが、プリントのオリジナル手ぬぐいで す。プリント手ぬぐいは、今までの手ぬぐいの使われ方とは違う観点から生まれた商品です。手ぬぐい自身、実用的な物として使われてきたわけですが、プリン ト手ぬぐいの大きな目的はファッション性です。それを持っていることが、カッコいいという感性から生まれてきています。特に、ミュージシャンやクラブチー ムのグッズの場合、手ぬぐいで汗を拭くとか、直射日光を防ぐとか、何かを包むというよりは、そのミュージシャンなりチームなりのロゴが入ったものを持つこ とによるファッションアピールであり、仲間意識の共有にあると思います。その手ぬぐいを持っているだけで、コンサート会場やスタジアムにいる他の人たち と、仲間だという喜びを感じることができる、そういうアイテムになっているのです。
ただ、大昔には手ぬぐいもきっと、地味な単色の物から、多色刷りのカラフルなものや、柄が凝ったものへと変化してきたはずです。そのときも、きっと今同 様、新しい感性が作り上げていったに違いありません。そういった意味からも、今プリント手ぬぐいが注目されているというのも、時代が求めているからなのか も知れませんね。

さて、これまで通りのコンサートやイベントグッズ、クラブチームの応援グッズなどもさることながら、企業様の販促用として、名入れタオルの代替というのも面白いのではないかと思います。
プリント手ぬぐいはなんといってもデザインの自由度が高いですし、カラフルな製品を作ることが可能ですから、色々なケースに応用できるのではないでしょう か。それこそ、和のテイストを重視される企業様から、和の物に洋のデザインを入れて、センスの良さを引き出す企業様まで、幅広く対応できると思います。

それと、残念はことではありますが、名入れタオルの場合、貰ってもそのまま雑巾にされてしまったり、どこかにしまいこんだままにされがちなのですが、手ぬぐいですと、目新しさや雰囲気も手伝って、手元に残してもらえる確率も高くなると思います。

こ のようにまだまだ手ぬぐいは活躍できる場所があると確信していますが、それを実現するためにも新しい感性や、今までにない考え方が必要かも知れません。若 いデザイナーの意見や、世の中のトレンドをもっと研究し、この伝統的な日本文化の火を絶やさないようにしていきたいと思います。

それから、 プリント手ぬぐいを普及させるために、私ども作り手が改善していかなければならないのが、ロットの問題です。現状ですと、どうしても100枚以上のご注文 でないと、割高になってしまいます。でも、世間には数十名のサークルやクラブがたくさんあります。その方たちが、自分たちのオリジナルグッズとして、プリ ント手ぬぐいを作ろうと思っても、ロットの問題が障害となり、作るのをあきらめざるを得ないということが現状です。これを何とか改善することによって、オリジナル手ぬぐいを数十枚という小ロットでも、安心して発注していただけるよう、努力していきたいと思います。

いずれにしましても、手ぬぐいは日本独自の文化です。
たとえ本染めであろうと、プリントであろうと、よその国には存在しない物です。その素晴らしい文化を、存続させるだけでなく、発展させていくのも我々の使命だと考えております。

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